【はじめに】
 2016年9月、私は宇都宮青年会議所に入会した。まちづくりをしたいなどの高尚な
動機はなく、先輩に言われるがまま入会届にサインをした。もともと高校を卒業してから
ずっと県外にいた自分としては、単純に地元に同世代の仲間ができるのが嬉しかった。生
来人見知りであり、人の前に立つより陰に隠れていたい人間である。そんな私にも目標が
できた。泥臭くまちのために実行動を起こす先輩、聡明で知性的な先輩、自身の性格を打
ち破り、一歩踏み出す先輩、どの先輩もとても格好よく見え、純粋にそんな先輩のように
なりたいと思った。そして、時を重ねるにつれ、様々な経験をさせてもらった。宮まつり
の地点台にも立つことができたし、理事長のセクレタリーをさせていただくこともあった。
また、出向の機会をいただくことで全国各地に多くの仲間を得た。そのすべての経験と出
会いを自分の糧にして、まちのために自分のできることをすべてやりたいと思えるように
なった。
青年会議所に入会したことで、多くの仲間と出会い、そしてその数だけ、自分の価値観
が拡がり、より多くの視点を持つことができる。そんな出会いに溢れている青年会議所は
自己を成長させるためには最高の環境である。
様々な人と出会い、自己成長を遂げ、地域を牽引するリーダーとして飛び立っていく。
あの頃想い描いた先輩の姿とは少し違うかもしれないけれど、自分の生まれ育った大切な
このまちを想う同じ気持ちをもって、実行動を起こすことが、私の使命である。

【隠れたまちの魅力を発見する】
 宇都宮市の人口は2018年の約52万人をピークに減少に転じ、2050年には45
万人を下回ると予測されている。また、同時に15歳から64歳までのいわゆる生産年齢
人口についても2005年の約34万人をピークに減少に転じており、人口減少、少子・
超高齢化時代に突入している。ここで我々がやらなくてはならないことは、この日本全国
殆どの地方都市で発生している構造的な課題を解決することではなく、宇都宮という地方
都市の特徴をしっかりと理解したうえで、人口減少、少子・超高齢化社会に適応した新た
な価値観を発信することである。例えば、大谷採石場跡地と県の特産であるいちごという
価値を融合して創出された大谷夏いちごのように、既存の価値を組み合わせることによっ
て新たな価値を創造する事例が増えてきている。このような事例をもっと増やすためには、
まず我々がまちの隠れた魅力を発見する必要がある。すでに使われなくなった遊休資源に
ついても同様である。多くの価値を再認識することにより、融合の連鎖が起き、さらにま
ちを発展させるよう32 なイノベーションが巻き起こるのである。

【多様性あふれる夢を描く】
子どもの発想はとても柔軟である。その柔軟性をさらに伸ばすような教育の在り方が求
められており、Science(科学)、Technology(技術)、Enginee
ring(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字をとったS
TEAM教育についても教育の分野において導入が進められている。また、都市部の学校
においては、ARを用いた、espоrtsが授業に取り入れられるなど、多様性あふれ
る教育手法により様々な価値観が創出されている。また、espоrtsについては、2
022年10月に宇都宮で全国大会が開催されるなど、コロナ禍によるステイホーム、オ
ンライン化により、加速度的に普及が進んでいる。教育の柔軟性は、将来のまちづくりの
柔軟性へと繋がる。我々がまちの未来を考えるとき、まず何を考えるだろうか、現状の問
題点に意識が向きすぎて、それに縛られた未来の描き方になっていないだろうか。子供の
ころを思い出してほしい。将来なりたいものを答えるときに、自分の置かれた現状を考え
て答えていただろうか、きっとそうではないと思う。現状、ありえない夢物語のような未
来でもいい、まず理想を描き、そこからバックキャストで今何をすべきかを考えていく、
そんなデザイン思考を持つことが重要である。デジタルツールが飛躍的に発展を遂げたか
らこそ、espоrtsや仮想空間などを利用し、新たなまちづくりの価値観を発信して
いきたい。

【持続可能な光り輝く社会を目指して】
まちにはそれぞれビジョンがある。宇都宮市も平成30年3月に策定した第6次宇都宮
市総合計画に改定を加えながら、2050年に向けた取り組みを行っている。宇都宮青年
会議所は明るい豊かな社会を目指して、毎年、様々な事業を行っているが、行政と我々が
目指す未来のまちの姿が同じでなければ、我々の事業がただの自己満足で終わってしまう
危険性がある。このまちを基盤として日々生活を行い、まちのために実行動を起こしてい
るからこそ、行政が行っている政策を正しく理解したうえで、事業を行っていく必要があ
るのである。我々の行う事業がまちの政策と全く違う方向性であるならば、それは未来を
見据えた運動とはなりえないのである。
我々においても中長期的な目線に立ったビジョンが必要である。現在運用されている5
0周年ビジョンを理解し、中期ビジョンの作成を進めていきたい。中期ビジョンを作るこ
とにより、青年会議所の目指す明るい豊かな社会と、毎年行っている事業が一直線上に繋
がり、LОMの運動に一定の方向性が生まれる。方向性が生まれるということは、一貫性
が生まれるということである。対外的に見たときに何を目指しているかわからない団体か
ら、何を目指しているのかが明確な団体へと進化を遂げる。不連続の連続という、単年度
制が魅力な青年会議所だからこそ、持続可能な光り輝く社会を目指した指針を作成してい
きたい。

【組織力の最大化】
青年会議所は様々な価値観を持った人が集まり、一つの目標に向かって歩みを進めてい
く組織である。40歳という年齢制限があるからこそ、組織の新陳代謝が促進され、毎年、
新たな価値を創出するような高い行動力、実行力を有する組織となるのである。しかし、
毎年拡大をし続けなければ、会員数は減少し、組織の継続性が危ぶまれる事態となる。
宇都宮青年会議所は、コロナ禍以前においては、メンバーの努力もあり、毎年20名を
超える拡大を行ってきた。しかし、ここ数年は純減が続いている。本年も40名近いメン
バーの卒業が控える中、まちにインパクトを与える事業を行い続けていくためには、継続
的な同志の発掘が必要不可欠なのである。
入会者数を増加させることと同時に、我々自身がより魅力のある組織へと成長する努力
を怠ってはいけない。地域の市民から信頼を寄せられるJAYCEEとして、個の存在価
値を高め、信頼から生まれる運動を起こし、共感が拡がっていく土壌を整えていくことが、
運動の拡大、そして新入会員の増加へと繋がっていく。持続可能な社会を目指し、共感が
生み出す連鎖の輪を拡大し、未来を担う同志を発掘しよう。

【多様な価値による次世代の育成】
文部科学省が令和2年9月に発表した、学校の働き方改革を踏まえた部活動改革による
と、令和5年度から休日の部活動の段階的な地域移行を行っていくとされている。教員の
働き方改革や、運動部活動への加入率減少を踏まえ、今まで学校単位で行っていた部活動
が地域単位での活動となり、地域や地元コミュニティーが子どものスポーツを支える時代、
つまり部活動が民営化させる時代が来るのである。
子どもたちの教育において、部活動の与える影響はとても大きい。私が子どものころに
は、当たり前のように小学校から部活動に加入し、集団での協調性や、目標達成へ向けて
努力する姿勢など多くのことを学び、いくつかのスポーツは今でも続けているなど、自己
の人格形成に寄与している。部活動だけではない、新たなスポーツの機会を創出すること
は、子どもたちへ楽しさや喜びを感じる機会を提供するとともに自己実現力の向上、社会
との繋がり、多様性の実現などの新たな価値を生み出す。そんな子どもたちが増えること
で、将来のまちが光り輝くものになるのである。

【世界へと繋がる国際交流】
 青年会議所の魅力の一つに国際の機会がある。戦後間もない時代において国交が回復す
る以前より民間外交として行われてきた国際交流は、新型コロナウイルスの感染拡大の影
響もあり従来とは異なる新しい形での機会を提供している。宇都宮市においては、生産年
齢人口が右肩下がりを続ける中、外国人労働者数は増加しビジネスの視点からみても国際
の重要性は高くなっている。また、育ってきた環境の違いが自身の価値観に大きな影響を
与えるのであるならば、地域に在住している外国人との交流はまちにもひとにも新たな価
値観を提供する。
価値を受け入れることは、視野を拡げることに直結する。何事にも果敢に挑戦すること
が大切である。国際的な組織である青年会議108 所だからこそできる国際交流の形を我々の住
み暮らす街において表現したい。それが、次の世代が新たな夢を描くきっかけとなるので
ある。

【市民相互の交流による心のふれあい】
 新型コロナウイルスの感染拡大により、今まで常識とされていたことが非常識となり、
急激にかつ半強制的にニューノーマルへの移行が進んだ。宇都宮青年会議所創立10周年
の記念事業として始まり、第11回目まで単独で、第12回目からは開催委員会形式にて
開催されてきたふるさと宮まつりについても、過去3年間通常開催ができていないことを
踏まえ、過去の歴史をしっかりと紐解き、検証したうえで、新たな形式による交流の場を
模索する段階にきている。
大切なことは、固定概念を捨てることである。そのうえで、この地域を愛する多くの人々
を結びつけ、そしてふれあうことで、地域社会の絆の強化と、力強いまちづくりを進める
必要がある。行政、企業、地域団体が一体となり地域社会を盛り上げていく運動を起こし、
我々青年会議所もその中の一つとなり、大きな流れを作っていこう。そして、その大きな
流れを一致団結して泳いでいくなかで、会員一人ひとりの成長と、組織の成長に繋げてい
こう。

【幸せな将来を描くために】
国連の機関である持続可能開発ソリューションネットワークが毎年発表している世界幸
福度ランキング2022によると、日本の幸福度は146ヶ国中54位という順位になっ
ており、先進国の中では最下位となっている。数ある項目の中で、「社会的自由」、「他者へ
の寛容」、「主観的満足度」において非常に低い評価となっているのである。
幸福度を上げるためには、誰もがワクワクするような未来を描くことが重要である。宇
都宮市におけるスーパースマートシティ構想は、次世代型路面電車システムの敷設と相ま
って、この地域独自の取り組みとなっている。現行の内閣において提唱されている「新し
い資本主義」、その枠組みの一つである、「デジタル田園都市国家構想」の実現に向けて、
我々の住み暮らす地域がひとつのモデルケースとなりうるのである。
事業が形となったとき、そこには新たな価値観が生み出される。多様な価値を受け入れ
ることが重要である。市民主導で、誰もがワクワクする、多様性溢れる事業を行うことで、
ウェルビーイングな状態を作っていきたい。それにより、このまちの将来は、より光り輝
くものになるのである。

【運動を生み出す人財とパートナー】
 青年会議所は、各地青年会議所をはじめ、JCI、日本青年会議所本会、地区協議会、
ブロック協議会と存在し、地域や国の発展のために、散在している課題を多面的な視点で
捉え、様々な価値観のもとで議論し、地域、国をより良くするための運動を展開している。
各地域には地域それぞれ特有の社会課題も存在するが、共通の社会課題も存在している。
まちを牽引するリーダーを目指す我々は、他の146 LОMや日本青年会議所本会、地区協議会、
ブロック協議会でどんな運動を展開しているのかを徹底的に調べることがまず必要である。
そのうえで、このまちの特色を取り入れていくことにより、より多くの価値をもたらすこ
とができる。また、どんなに面白い事業、意味のある事業を行ったところで、それが運動
とならなければ意味がない。単年度制であるからこそ、次年度以降もその取り組みが自走
する、つまり運動にならなければいけない。自治体、自治会、他団体等との連携を強化し、
5年後、10年後を見据えた運動となるような仕組みを構築したい。

【出向の魅力ととちぎフォーラム2023】
 出向は、青年会議所における最大の魅力である。宇都宮青年会議所は、毎年、JCI、
日本青年会議所本会、関東地区協議会、栃木ブロック協議会へ多くの出向者を輩出してき
た。先達の活躍により、宇都宮の知名度は高く、初めて出向した者でも活躍しやすい土壌
ができている。出向することにより、全国各地に仲間ができ、違った価値観からの事業構
築の経験は、自身の価値観を広げ、また、培った人脈は一生の財産となる。成長したメン
バーがそれをLОMに持ち帰り、事業構築に活かすことにより、組織としての成長や質の
高い事業構築へと繋がるのである。今後も、全国の素晴らしいメンバーたちとの出会いの
機会を提供したい。LОMとは違うフィールドで出身地や考え方が異なるメンバーととも
に切磋琢磨しあい、全国に友情で結ばれた多くの同志を得てもらいたい。また、本年は、
栃木ブロック協議会主催のとちぎフォーラムが11年ぶりに宇都宮の地において開催され
る予定である。この11年で積み重ねたすべての知識と経験、そして、全国大会を主管し
たプライドすべてを懸けて、最高のフォーラムを構築しよう。

【柔軟で持続可能な組織体制】
 宇都宮青年会議所は公益法人に移行してからこれまで、公益性の高い、まちの発展に資
する事業を行うことでその公益法人格を維持してきた。持続可能な組織であるためには、
まずメンバー一人ひとりが、自分の所属する組織について理解することが何よりも重要で
ある。定款、諸規定を理解することはもちろん、公益法人という法人格についても考えを
巡らせていきたい。
2013年末にそれまでの社団法人という枠組みが撤廃され、新たに公益社団法人と一
般社団法人という枠組みができ、各地青年会議所においても公益と一般の選択の機会が生
じた。それから約10年が経過し、公益社団法人から一般社団法人へと移行するLОMが
多くなってきている。どちらを選択するにしても、まず議論をすることである。公益社団
法人のメリット、デメリット、一般社団法人のメリット、デメリットを認識したうえで、
組織の在り方を議論していくことが、柔軟で持続可能な組織へと繋がるのである。

【結びに】
 青年会議所での活動は、大変なことも多い。逃げ出したくなることもあれば、泣き出し
たくなることもあると思う。それでも、笑うことを忘れてはいけない。笑顔があふれ、メ
ンバーが楽しそうに活動する組織にこそ、人184 は集まるのだ。新たな一歩を踏み出すのは非
常に勇気がいることだと思う。だとしても一歩踏み出すことによって自分の世界は何倍に
も拡がる。
今までの常識が非常識となることもあるこんな時代だからこそ、勇気ある一歩、その実
行動の積み重ねが、まちを、ひとをよりよくしていくのだ。失敗してもいいじゃないか、
やってみよう。なんとかなる。その行動を評価してくれる仲間がこの組織にはたくさんい
る。

光り輝く個となって、まちを導くマイルストーンになろう。

TOP
TOP